2013年2月28日木曜日

震災の起きた3月を迎える町に・・

  昨晩のテレビのニュースで、被災地の様子を取り上げた内容がありました。アナウンサーが、「3月を迎えあの日を忘れないために折に付け被災地を取り上げます」と話していました。3月を迎えると、急にメディアが被災地を取り上げ出すのは、昨年と変わらない感じがしますが、単なるニュースで終わらない取り上げ方をして欲しいと切に願います。

 今日の南三陸町は温かくなりました、気温は志津川地区で10°まで上がり春の日差しを感じました。思わず、あたたかい日差しの中、雪で汚れてしまった車を洗ってしまいました。
町の中は、未だにあの当時のままで壊れた水門が横たわっています(写真左上)。国道沿いには、倒壊した家屋の基礎を掘り起こした際に出たコンクリートの固まりが山のようにうず高く積まれています(写真右)
 
 そのような中に、鉄骨だけの建物が佇む姿(写真左)に、心が痛くなります。
 先日、ブログで紹介しましたが、この町を見下ろせる高台にある仮設住宅に住んでおられる女性が、仮設住宅から見える町(写真右)を毎日見に出てきます。見に出てきては、自分の家がないのを確認して帰ってくるとのこと・・・。
 今日は、その方の部屋を訪問してきました。迎えてくれたその女性は自宅が流された話をしながら、「何千年に一度の出来事に、どうして私が経験しないといけないんだろう・・・、家の周りでは沢山の知り合いが流されてしまいなくなりました・・・私だけが残ってしまったように感じるし、私みたいなものがどうして残ったのかなんて考えてしまう・・・」と思いを伝えてくれました。自分の人生や命の意味を模索する日々を生きているのが伝わってきました。「でもね、私がこの仮設住宅で、一番幸せだと言われているのよ、だから幸せだと思うようにしたいの」と彼女は話してくれましたが、他人が話すからではなく自身で「幸せだ」と思える日が来ることを願いたいものです。そして、このような思いで日々を暮らす方々が現実にこの被災地に居る事を多くの方々が知って心に止めて欲しいと思います。


 今日は、来年度の活動に向けての事務仕事がメインでした。
震災によって生じた心の痛みを背負って生きる方々だけではなく、震災以前の未解決の課題を背負って苦しみながらも精一杯一日を生きておられる方々がこの地に、どんなに多いことか・・・。まだまだ心の回復への道のりが長い事を思うと、来年度も、その後も地道に活動を続けていけるように努力したいと思います。



2013年2月27日水曜日

日向ぼっこのようなお茶っこ

cme&see研修に参加していたシスター二人は、今日は岩手県の大船渡ベースキャンプを訪問しました。途中、陸前高田の町の様子も見ながらの移動・・・。どこまでも続く津波の影響に胸が痛くなる思いに駆られました。大船渡ベースキャンプでは、ベース長のハルノコーさんが迎えてくれました。二人のシスターもハルノコーさんとは面識があり懐かしく嬉しい再会になったようです。

今日でcome&see研修の最終日でした。参加していたフィリッピン人のシスターが、「私の国では毎年、台風で沢山の家が流され沢山の人が死にます・・でもその後の支援は恵まれていません。でも、ここの日本の支援は恵まれているとも感じ複雑です・・・私はここを忘れません、私には何が出来るか考えさせられる貴重な時でした」と感想を分かち合ってくださいました。この地に来た自分は何が出来るのか、この地を忘れない事を生きるのはどうしたらいいのか? この課題に向き合いながら被災地で出会った方々を忘れないで繋がって行って欲しいと願います。(記:宇根)


 一方、スタッフは、歌津地区の名足仮設を訪問しました。第1回目からの長いお付き合いであるHさん(写真左)は「今日はHUGハウスの来る日だから、仕事を休んで楽しみにして待っていたよ。」と分かち合って下さり、つながりを大切にしてくださっている思いが伝わってきてとても嬉しかったです。感謝です。

ここは、住民主体の毎週水曜日の集いを絶やすことなく続けてきたコミュニティーです。すでに家を建て引越しした方もいれば、町外に移って行った方も、またまもなく引越しするの。と淋しくてウルウルする方も居られ、あたたかいつながりで支え合っていたことがわかります。「引越ししても、娘が水曜日にはここに連れてきてくれるの。」という話も聴かせていただきました。日向ぼっこのようなお茶っこがこれからも続いていき、人々の支えになれば嬉しいです。(記:堤)

2013年2月26日火曜日

come&see研修を活かした出会いを

 come&see研修の二日目。

 今日は、5人の地元スタッフも活動日でしたので、二人のシスターと一緒にcome&see研修を行いました。

 研修内容は、まず日頃ケアカフェの中で参加者と一緒に確認している「心のケアについてのミニ学習」を読み合わせ、ケアのために大切に感じているポイントの確認を行いました。その後に、沈黙・そしてアイコンタクトをスタッフと一緒に行いました。

 沈黙の必要性は出会う方々へのセルフケアと準備のため、アイコンタクトの必要性は出会う方々の苦悩や悲しみから逃げずにしっかりと向き合うため・・・。この内容を二人のシスターと学び直した時間。スタッフにとっては日頃行っている基礎の確認ですが、come&see研修の度に何度も確認することになります。ですが、この積み重ねが何より出会う方々への準備にもなっていることを忘れないようにしたいものです。


 研修後は、シスターと共に地元スタッフは仮設住宅の訪問と町ナビを昨日に引き続き行いながら研修で学んだ事を出会いの中で実践する機会を作りました。

 沢山の出会いがありました・・・、震災後に体調を崩して緊急搬送され危篤状態に、その後に大きな障がいを背負って今を生きている方・・・障がいをもつ子供と一緒に仮設住宅で暮らしながらも、小さな作品を作りながら落ち込みそうになる心を維持している方、妻を津波で流された思いを抱えたまま暮らしている方・・・と。本当に出会いの不思議さを感じました・・・出会いをもたらす大きな存在の力を感じざるを得ません。この出会いを大切に考えたいと思います。
 今日の出会いは明日同じようにあるかは分かりません。それだけに、出会いの一つ一つの大切さを自覚できるように意識したいと思います。

 また、今日は南三陸町の役場に地元スタッフと共に出向きました。役場の担当の方に活動の紹介を行い、活動を通して見えてきた住人の心の現状を訴え今後も活動を継続する必要性と連携のお願いに行きました。担当窓口の方は時間を延長して話を聞いてくれ活動への理解と是非連携も模索したいとのこと・・・でした。今後も何度か相談を繰り返しながら連携や協力体制を構築していきたいと思います(記:宇根)




2013年2月25日月曜日

come&see研修で共に学び成長し合う

  今日から、名古屋にあるカトリックの修道会「御心の聖母会」から、SR高良とSRレオニーラさんがcome&see研修で来所されました(写真左)。
 今日から、27日までの間、地元スタッフとの町ナビやカフェへの参加等の体験をすることとなります。到着が伸びてしまいバスでの移動に時間がかかったようですが、到着後は疲れた様子も見せずに笑顔での挨拶に頼もしく感じました。


  地元スタッフは、ようちゃんとえみちゃんがcome&see研修に参加してくださいました。
 今日のcome&see研修は、午後から町ナビを行いました。ナビ役はスタッフのようちゃんとえみちゃん。SRの二人は、メディアで伝えられている情報だけではなく実際に目で見て確かめたいという希望がありましたので、地元スタッフである二人の生活や自宅場所や避難した経過などの説明を受けながら町を観て回る事にしました。

 津波の高さを目の当たりにする、戸倉中学校や志津川中学校では「信じられない」という感想でした。フィリッピン出身のSRレオニーラさんにとっては、自国の町が毎年台風で流される風景と重なる思いもあった様で、「どのように援助が可能なのか・・・考えさせられる」という感想を分かち合ってくださいました。高良さんも、同行してくれた地元スタッフが元あった自宅の話しや避難した際の話をしてくださった事に震災の様子が実感できた様です。


 come&see研修は、この町に来て、見て忘れないで欲しい・・・と言う意味で行うプログラムです。しかし、この研修の半分は地元スタッフの為にもあると考えています。
 今日も、自宅跡を紹介しも、てくださった二人にとっては、自分の被災経験に向き合い自分の今の心の状態に触れる事になったようです。「前までは、家の側に立つと心が重くなっていたのに、今は変わってきた感じがする・・・癒しの道を歩んでいるみたい」と紹介してくれた二人には、自分の心に気がつくよい機会になったようです・・・自分自身の心の変化に気がつきつつ、変われる自分の力を喜べたら嬉しいと感じます。

 SR高良さん、レオニーラさん、明日も引き続き良き体験と出会いがありますように・・・。
そして、この出会いが他のスタッフにも良き学びになりますように願います(記:宇根)




2013年2月24日日曜日

おもちゃ図書館でのカフェ

 今日は地元スタッフはお休み。

 毎月、第4土曜日は「おもちゃ図書館」の日です。

 町内の障がいをもつ親の会が開いている集まりです。子供たちと月に一緒に集い、遊びながら、子供も親も交流を図るという日です。

 私たちHUGハウスは、この「おもちゃ図書館」の中で、カフェを手伝ってきていました。最近は時間の都合がつかずに参加できていませんでしたが、今日は久しぶりに参加し、カフェの提供をさせていただきました。

 公民館の広い集会室全部におもちゃを広げながら一緒に遊べたのはとても楽しい時間でした。子供たちも、日頃仮設住宅内で思いっきり遊べない分、自由にのびのび遊べたのではないかと思います。
 思いっきり遊び、その中で子供達なりに震災後に感じている様々な思いが消化されていけることを願います(記:宇根)


2013年2月22日金曜日

必要とするすべて人にグリーフの機会が与えられますように

今日の午前中、スタッフは2つに別れて活動しました。

ひとつのグループは、みなし仮設になっている登米市米谷の促進住宅を訪問しました。「ケアカフェ心香」の訪問をはじめてから一年近くになります。そろそろ自分たち自身で集いの企画をし交流やコミュニティ作りをしようと心の決め、第1回目の日でした。着いた時はお部屋も暖めてあり、お湯を沸かしたり準備を始めていました。事前に皆さんで集まり話し合いを行い、負担なく楽しく出来るようにと工夫もしたようです。例えば一品持ち寄りも全員でなく2~3人ずつ順番で持ってくるという感じで。「ずっとこれがしたかったの。実現出来てうれしい!!」と参加者の方の笑顔が輝いていていました。もともとお料理が好きだったり、作ったもの食べてもらって幸せを味わったり、作り方を教え合ったり、そのようなもてなしで交流している方々にとって、これもひとつのグリーフになっているように感じられました。

ハグハウスのスタッフはあたたかく見守りながら一緒に時間を過ごさせていただきました。細く長く続いていけたらいいと思います。1年前は、悲しみや苦しみに押しつぶされそうになって、どう生きていけばいいのかわからない。そんな状況でした。悲しみが消えたわけではないですが、しっかりと内面にある叫びを繰り返し繰り返し吐き出し、その積み重ねが今日を迎えられたのではないかと思います。ゆっくりゆっくり一歩一歩いやしの歩みを共にさせていただけることに感謝します。

もうひとつのグループは、介護施設のHさんを訪問しました。Hさんはもちろんのこと職員の方も訪問を喜んで下さり感謝します。施設で親切にされても、やはり南三陸を思う心と家族や故郷を離れて暮らす淋しさ、魂の孤独は、だれにも埋められないようです。「さみしい、さみしい。」と泣かれて・・・。と帰りづらかったとスタッフの声でした。変えられない現実の中でしっかりとその痛みを受け止めながら、Hさんのことを忘れずに定期的に訪問をこれからも続けていきたいと思います。Hさんの叫びを受け止めてくださったルミちゃん・えみちゃんありがとうございました。


午後は、それぞれ個別訪問のために、南方方面と、横山方面を回りました。3.11が近くなることも心に止めながら、なるべくご家族を亡くされた方やまだ見つかっていない方のご家族を中心に訪問を続けています。グリーフが必要な方ほど出会えていない方が多く、情報も届いていないと感じています。

ひとりのスタッフが、「最近、家(仮設)でいろんなものを整理していたら、心のケアとか相談に関するチラシがでてきたんです。こんなものもらっていたなんて全然覚えていないんです。」そんな話をしながら、「自分が病んでたりいっぱいいっぱいの時って、自分に必要な情報だとしても(心に)入っていないんですね。もしかしたらチャンスを逃して今もグリーフや心のケアにつながらず苦しんでいる人もたくさんいるっていうことですね。」とあらためて心のケアの大切さと難しさに気づいたようです。そんな地元スタッフがともに働いてくださることはとてもありがたいです。必要とするすべての人にグリーフや心のケアの機会が与えられますようにと祈りつつ、これからも地道な活動を続けて行きたいと思います。(記:堤)

2013年2月21日木曜日

この地で培われた信仰心による癒し

「震災の前に、漁に出ている時に見える朝日がとても綺麗だったよ・・思わず手を合わせていたけど、あれが忘れられないなって思う。今でも、手を合わせるよ・・・毎日、朝起きたら、孫のためにでしょ、それから亡くなったお父さんのためにでしょ、そして働いている子供たちのためにでしょ・・・みんなのためにこうして手を合わせるのさ。それから、今度は、寝る前にまた、こうして手を合わせるのさ」

 今日、ケアカフェを行った仮設住宅に住まうSさんは、祈る際の手をきれいに合わせる仕草をしながら(写真左)、祈っている思いを分かち合ってくださいました。漁をしていた頃に沖合の洋上で目の当たりにする朝日に、畏敬の念を抱き手を合わせる姿には、生活の中で培われた自分を超えた存在への「信仰心」が現れているように感じます。
 この南三陸町では、本当にこのような素朴な信仰心に多く出会います。「流された娘が上がってこないなら、海神にでもなって私たちを守ってくれるように手を合わせているのさ」、「毎日、海に向かって手を合わせに散歩に行くのが常さ・・沢山の人が流されているから」・・・という話も先日聴いたくらいです。

 この地に住みながら、心を支え生きる力を生み出してきた一つとして、この信仰心が大きいのではないかと思います。そして、自然の力である地震によって傷ついた心は、この地に継がれてきた自然や自分を超えた存在への畏怖や畏敬・信仰心によっても、少しづつ癒されていくのものでもあるだろうと思います。厳しくもありながら豊かでもある、この自然の中だからこそ身に付いたそれぞれの信仰心が今助けになりますように願います。


 今日の「ケアカフェ心香」は、歌津地区の伊里前小学校仮設住宅で行いました。ほとんどがマンツーマンで話が聴けるくらいの人数でしたので、参加者は思いを聴いてもらえた感は大きかったようです。
 震災の経験によってぞれ以前に抱えていた家族間の問題に直面しては、その感情を「海に向かて吐き出すんだよ・・・」とこぼされる方がいましたが、海に向かうだけでなく家族間で本当に向き合うことが出来るといいなーと思いました。それが出来ない現実が、苦しみを増していく要因なのかもしれません・・・。苦しんでいる当人だけでなく、家族皆も意識の変化が求められているのかもしれません。
 
 課題は大きい・・・。

 午後の個別訪問では2箇所の在宅地域と、4箇所の仮設住宅を個別訪問してきました。震災によって仮設住宅が実家の隣に出来、そこに妹が入居したので姉妹が近くになったと喜ぶお二人の笑顔(写真右)には、心休まりました。一方では、家が残っているがために近くの仮設住宅の方々に遠慮し交流も持てないという現状もあり被災地の苦悩は複雑だと、実感しています。
(記:宇根)

 

2013年2月20日水曜日

「コミュニティーカフェ」を開いて

今日は、自然の家仮設住宅で毎週水曜日に行ってきた「コミュニティーカフェ」の最終日でした。

 この「コミュニティーカフェ」は、日頃鍵の空いていない集会室で誰でもが来やすいカフェを開き、住人同士が集まれる機会を作りたい・・・という声に応えて2月の間に試みとして取り組んでみた活動です。

 まずは、何とか住人同士の繋がりを作っていきたいとの志をもって準備にあたられた心香サポーターの方に感謝とご苦労様を伝えたいと思います。ありがとうございました、そしてご苦労様でした。3回カフェを開きましたが、参加者は少なかったのが現状でした。ただ、それでもサポートをしてくださる方と、仮設内で人と人を繋いでいく事の難しさと現実を分かち合えたのは大きな収穫でした。
 仮設住宅内には当然様々な人が居て、それぞれの思いが違ったり話にも食い違いがあったりと、コミュニティーになっていくためには乗り越えなければ行けない壁があるのが良くわかります。それでも、その困難はひとつになっていくための尊い要素なのだと考えたいとも思います。この「コミュニティーカフェ」の機会を通して学べた事を私たちも活かしていきたいものです。

  個別訪問では、戸倉地区の仮設住宅と志津川地区の在宅を回ってきました。

 住人の手作り集会室(写真右)に、毎日午前と午後に集まってきているある仮設住宅では、80代の方々が昔を懐かしみながら、その苦労話しを聴かせてくださいました。昔の女性の辛い現実を話しながらも、「なーに、これが当たりまえだったのさ・・・」「地面をなめるように、働いていたから、体も壊してしまうのさ」などと聴いているうちに、苦労した分、「よくやったね」とちゃんと褒められていたら良いなって思いました、自分でも家族からも・・・。

病気のためにベッドに寝たきりの男性が、「津波で全部、流されてしまった・・しかたないよ、自分でそこに住もうと思って此処にやって来たんだから、だれも責めれないさ。ただただ、この命が残されただけでも有難いと思う。」と語ってくれました。男性は寝たきりからリハビリをしながらもう一度、元の自分の状況に戻そうと懸命です。そして、日中たったひとりの部屋の中に居ながらも、残された命を使って子供達と「もう一度家を建てるんだ・・」という願いを教えてくださいました・・・静かな力強さのようなものを感じました。
(記:宇根)


2013年2月19日火曜日

日々流された家を確認しては止まない思い

「復興支援は、まだまだ足りない・・地震も続いているので不安もある。体だけでなく、心の支援も欲しい、相談に乗ってもらったり、ほっとできる時間を作って欲しいし、コミュニケーションができるような支援も欲しい。家族で支え合うけど、それだけでなく周りからの支援が、一番力になる。いろんな人の話を聞いて、アイディアが広がっていけるから・・・」


 上記は、今日仮設住宅の個別訪問で出会ったTさん(写真左)のメッセージです。県外の方々に、どんなメッセージを送りたいですか?との質問に答えたのが上記の訴えでした。
 Tさんの希望する心の支援の内容は、仮設で暮らす病気がちな方々にとって大きな課題を表してるのかもしれません・・・つまり、「相談に乗ってもらえない、ほっと出来る時間を一人で作るのが難しい、コミュニケーションを交わす相手が家族以外にはいない・・・」と。
 仮設住宅の中で病気や障がいに苦しむ方々の声は、なかなか表に出てきずらい中、是非発信して欲しいと願ったTさんの声を真摯に受け止めながら、日頃から弱い立場や苦しい立場にあって声を出せない方々側に立った活動を心がけたいと願います。

  今日、訪れた仮設住宅は志津川の町が見下ろせる場所にたっています。そこから見下ろす町には、もう「がれき」さえ無くなり平たい土地が横たわるように見えます。

 その風景を毎日、繰り返し眺めては部屋に帰ってくる女性が居ます。家族の話だと、女性は毎日家があると思い仮設住宅のハズレまで見に行くそうです。そこで、その都度、平たくなった町を眺めては、自分に家が無いことに気がつく・・・そして諦めて部屋に帰ってくる。これを何度も繰り返しているそうです。

 毎日、希望を持って見に行き、現実を目の当たりにしてうなだれるようにして戻ってくる姿を想像すると、深い悲しみを覚えます。「忘れたくても、忘れられない、忘れたくない」・・・そのような叫びが聞こえてきそうです。たまたま、その友人が入院している病院(写真上左)を訪れたら、友人もまた、「家に帰りたい・・ここでは長生きしないよ」と話していました。二人して願う思いの強さに、心つまります。

 何時か、仮設住宅のハズレまで日々繰り返す時に一緒に付き合わせてもらえないかなと感じます・・・、失った大事なものの大きさを一緒に味わい、その悲しみの一端を分かち合わせてもらえたら・・・(記:宇根)



2013年2月18日月曜日

「町がホスピスになるように」~苦しみの中でも美しく、やさしく生きる


今日は一日個別ケアの日でした。

HUGハウス田尻畑
 震災の時の苦労や避難所生活のむずかしさ、これからの不安など、あげたらきりはないですが、それでもやはり出てくるのは震災よりもキズついた人との関わりです。家も家族も流され財産を失い、その上さらに人の冷たさでキズついた話を伺う事はよくあります。一生許せないと思うほどの痛みや苦しみを背負いつつ必死に生きておられる方がどれほど多いか、人間の力では修復できないほどの苦しみや関係性の崩壊はそこらかしこにあります。それは淡路阪神大震災の時も同じでした。非常事態の中では人の美しさも醜さも現れます。それが人間の現実なのだと思います。


  それでも苦しみを吐き出しながら涙しながらも、今日出会った方は「私の人生の中で一番うれしかったことは人に親切なことをしたことです」と話して下さいました。流された家は国道に面しているため、徒歩や自転車、バイクで旅をする方によく出会うそうです。そんな時はいつも自分から声をかけては、旅人をもてなしたといいます。休ませ、水や食事を与え、お風呂に入れたり、泊まらせてあげたり、帰る時はお土産をもたせ、旅路が無事であるように祈って送りだすのだそうです。聖書のマタイ25章に同じような話しが記されています。その方はキリスト者ではありませんが、その心の清さに心を打たれ私は嬉しくなり今日の出会いを感謝しました。


人から意地悪されても冷たい態度をとられても、決して同じように返すことなく、苦しみの中でも人間としての品性を失わずに美しく生き、やさしく生きることができるようその方の心と魂を清く保って下さるように神に祈ります。
HUGハウス&ケアカフェ心香」が被災地で大切にしていること目指していることがここにあります。一人ひとりが自分をいたわり人をいたわり合えるようになり「町がホスピスになるように」そんな願いを抱きつつ今日も一日の活動が終わりました。(記:堤)

2013年2月15日金曜日

「お茶っこ」と「ケアカフェ」の違い


  今日のカフェは、歌津地区の吉野沢仮設で開催しました。

 はじめて参加する方もおられたため心のケアのワンポイント学習も行いました。

  ここの仮設では、普段も住民同士で集まり、楽しくお茶のみをしたりカラオケをしたりと和気あいあいとした集いをもたれているようです。その中で元気をもらったり支えられたり、悲しみを乗り越えたり、人々にとって貴重なひと時になっているようです。その意味では、私たちのカフェはいつものお茶っことは少し趣が違います。カラオケで盛り上がる楽しいひと時を提供することはありません。それでも、たまには意識してじっくりとお互いの話しに耳を傾けあったり、自分の話もていねいに聴いてもらったりすることもいいのではないかなと思います。その中で、いやしの作業をしたり、未解決の課題や心の中のさみしさや本音を意識したり、痛むいのち悲しむいのちをいたわる時間を持つことも長期的な視点から大切なものと考えています。これからまだしばらくは続くであろう「先の見えない不安」の中で生きるためにも助けになると感じています。
  「今日参加して良かった。大事なことを学ばせてもらった。家に帰ったら○○にも教えてあげたい。」とワンポイント学習のパンフレットを大切そうに持って帰りました。 被災されたお一人お一人が自分自身のケアにつながる選択肢や情報をより多くいただき、ふさわしい友に恵まれ、自分らしい歩みをしていただければ幸いです。

 午後、地元スタッフは、昨日に引き続き、被災地をテーマにした小説の方言監修を行いました。

 小説といっても被災地のことを扱っていますので内面に触れたり、震災で受けた心のキズに刺激になったり、共感的な思いをもったりで、痛みを味わったり感謝の思いになったりの作業でした。それでも地元の人にしか表現しきれない言葉や方言でしか伝わらない思いがあります。その意味でもこの作業がスタッフにとって、誰かのために役に立つ存在になり、いやしの作業にもなればいいなと思います。また出来上がった小説を読まれる方々にも作者を通して大切なメッセージや愛と思いが伝わればいいなと思います。(記:堤)




2013年2月14日木曜日

2月の定例スタッフ研修

  今日の午前中は、ケアカフェ開催と以前南三陸町を取材にHUGハウスに来られた方で小説を書き上げた内容に現地の言葉へと編集するという作業(写真右)を行いました。
 午後は、2月の定例スタッフ定研修会の日でした。


 今日の午後の研修の内容は
①日頃カフェや個別訪問に出かける際に、痛む命に寄り添うという意識を、どう作っているかの確認。
②日頃の出会いを記した記録を持ち寄り、寄り添い方や傾聴のあり方を皆で確認する。
という内容でした。

 ①については、スタッフ一人ひとりがカフェや個別訪問を行う前に、意識を持つように工夫している事を出し合いました。スタッフそれぞれが自分なりに、出会いのために自分自身で意識作りの工夫をしている事を知り得たのは役に立ちました。現在、朝のミーティング時に沈黙の時間を持ち、内面を落ち着かせて出発していますが、更にチームとしても互いに確認し合いながら意識作りをしていくことを確認できたと思います。痛む命に寄り添うためにも、その内面に大事に触れるためにも、そして自分の価値観ではなく相手の価値観を教えてもらうようになるためにも漫然と話を聴くのではなく、意識して相手の話に望めるように今後も努力していきたいと感じます。

 ②については、活発な意見交換となりました。自分が出会った出会い方を、スタッフ皆で客観的に意見を出し合う事はとても大きな学びになります。互いを信頼しあって、相手の成長を願い意見を出し合えるようになっていくことで共に成長していけるでしょう。また、自分の知らない自分の癖や思いを仲間の指摘で気づかせてもらうのは、謙虚さを学ぶ機会にもなると考えます。
 先月も同じ方法での学びをしていますが、1ヶ月の間にもスタッフ、一人一人本当に貴重な出会いから学び成長しているのが伺えて嬉しくなりました。
そして、この互いに学べる関係が更に強くなっていきますように願いたいと思いました。スタッフの皆さん、ご苦労様でした。今日の学びが明日以降の出会いに役立っていきますように・・・。

 午前中のケアカフェは戸倉地区にある神割崎仮設住宅で行いました。これまでは、集会室はなく仮設内の部屋を改造して集会室にしていましたので、カフェには狭さを感じていました。この度は、新しく集会室(写真右)が出来上がったので、そこを使ったカフェを行うことが出来ました。十分な広さがあるため、足の悪い方々が多い参加者も安心して時間を過ごせたようです。
 参加者は12人でしたが、スタッフが3人しかいなかったため、話をしたい方に十分に時間を割けなかったは反省でした。それでも、過去の苦労話しや今後の生活への不安、そして仮設から次の生活を考えての重荷・・・等を訴えがあり、話し終わって「すこし気持ちが楽になったよ・・・」との感想をいただけたのは良かったと思います、今後も引き続き集会室の利用させてもらいながらもカフェを続けていきたいと思います(記:宇根)