「秋風が心地よい、晴れの日。志津川地区の仮設を訪ねた。
7月以来、訪問記録のないAさんを訪ねる。
嫁ついで50年間のお話し、考え方、感じ方をうかがった。
今も事情があり、息子夫婦、孫と離れて生活されている。
『先の事を考えると不安で眠れない時がある』事や、
この震災は、大きな物を奪っていった。物だけでなく、思い出も、形も…。
一度変化した形は容易には直らない。
語るAさんのお顔を見ながら、アイコンタクトするこちらまで、自然に涙が流れてしまった。また、お話を聞かせて下さいね。」
「ハートとハートがつながればいいから。」
Aさんの深い信念は、理不尽な人間関係のいがみを越える力となっていることでしょう。同時に、「ハートとハートをつなぐ」には、時間と忍耐が必要である事を学びます。
古希を過ぎた今もハートをつなぐ努力が続けられています。
「心均して灰均す」
仏壇に居る夫とその両親を拝む前には必ず、お線香を立てる灰をきれいに均し、そして手を合せて拝めば、不安でいっぱいの心も次第に平らにならされ、穏やかになる。Aさん独自のスピリチュアルセルフケアと言えるでしょう。
HUGハウスでも、活動前の「沈黙」は「心をならす」大切な時間です。
さて、以前から某仮設のNさん入院の知らせを聞いていた地元スタッフるみちゃん、ようちゃん。病院訪問のため一路車を走らせます。
病院とは不思議な空間です。生死を彷徨う人々、その方の人生を彩るような面会の方々とそこで起こっているドラマを見ることができます。そんな空間の中を歩いていくスタッフ。面会者がドレスを持って病人に見せる姿が目に入ります。この患者さんの「いのち」は短いのかな…スタッフは、いのちの神秘、人の在り様を深く思い巡らしていました。
さて、Nさんの病室にたどり着きました。久々に見るNさんは、体に管をたくさん付け、酸素マスクをして苦しそうにしています。しゃべりたそうにしていますが、言葉にならず、一言「こんなに弱くなってしまって…。」
このような状態を目の当たりにしたスタッフは、あわてて「病院にいれば安心だから…」と言葉を掛けます。様子を伺っていると、だんだんいたたまれない気持ちになってきます。Aさんにとって入院は、単なる身体的な回復を待つ場所ではないのかもしれません。背景にある様々な心の痛みの要因を思い巡らし、Nさんが「苦しかった」と吐露された時、スタッフは「一番心にグッときた。」(コメント:ようちゃん)ようです。
スタッフは、土産話を持ってきていました。Nさんが大切にされていた畑を今、Nさんのお孫さんが一生懸命耕しているということです。Nさんはこれを聴き、安心されているようでした。安心の表情を慰めにスタッフは退室しました。
同じ病院に3か月前に入院された方がありました。地元スタッフは、朝のミーティングで、最近同じ名前の掛っている葬式を見たと申し送ります。入院前には苦しそうにされていたHさん。高齢にも関わらず毎日病院へ通い、看病する妻のSさん。午後はこの方々を訪ね仮設に向かいました。玄関先にある花の束。何を意味しているのでしょうか。お部屋に声を掛けてみます。すると虫の知らせは当たっていました。Hさんは数日前に、転移先の病院で静かに息を引き取られていました。やせ細った妻のSさん。スタッフは中に入らせていただき、お線香をあげ、Hさんのご冥福を祈ります。写真の中で笑うHさん。
3か月前同じ場所で、苦しそうに息をしながら昔の仕事の話を生き生きと話してくださった様子が目に浮かびます。臨終の床では、命を取られてしまうことに悔しそうな表情をされていたようです。しかし息を引き取られた最後は眠るように穏やかな顔になっていたとSさんは話してくださいました。いのちの完成がここに一つ。
るみちゃん、ようちゃんは、90代の女性の方を訪問しました。いつもは寡黙ですが、今日はお話しして下さいました。テレビドラマ「おしん」のような時代に育ち、苦労をされたFさん。体が思うように動かない今でも、自分の身なりを整え、スタッフの声かけにさっと出て来られます。お話の端々に、他者への思いやりや気遣いを感じさせます。「今は幸せ。」と話される顔は、きれいでつやつやしています。手押し車を引きながら、凛と立つ姿と輝きは、彼女の人生観を表しているようでした。今日の出会いに感謝です。(記:林)
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