2013年7月31日水曜日

自由である事の大切さを考える

 「もう、だんだん億劫になってきてしまった・・、なんだか家から外に出ていく気力もわかない」

こう話していたのは、仮設住宅で暮らす女性です。これまでは、元気で振る舞い周りの方々とも積極的に関わりを持てていた方でした。それが、今日出会うと上記のように話をするほど変わっていました。理由を伺うと、「自分で出かけたい時に出られないし、出かけるときには誰かにお願いしないと出ていけない・・・そんなんじゃ、だんだん嫌になってくるの・・だから、もう家にいては動けなくなってしまうんだよ」との事でした。

 高台に立っている仮設住宅から出かけるにも自由が効かない、自分がしたいときに出来ない・・この不自由さが、徐々に気力を奪っていくのだと改めて教えられます。「自由である事」が、如何に人として生きる上で大切なことなのか・・・。


 今日の活動は、志津川地区の仮設住宅でのケアカフェ心香の開催と個別訪問でした。

 ケアカフェ心香を開催した仮設住宅では、二ヶ月に一度のカフェを心待ちにしている方と反対に、「もうカフェには行かないくともいいよ」と両方の思いを持った方に出会えたのが印象的でした。

デリバリーの珈琲を持って
もう行かなくてもいいよと話していた方には、仮設住宅の側にある畑で出会った方でした。何度のカフェに来て話を聴いてもらっていた方ですが、今日は「大分話を聴いてもらって心が楽になった・・・今は、人を楽しませる事が嬉しくて、こうして畑仕事をしている。もうカフェに行って話を聴いてもらわなくてもいいくらいになった」と話してくれました。自分なりに、被災で亡くした家族との別れ・その後に生き延びた自分の命の意味を探せるまでになったんだと嬉しそうに話す姿に、心の回復の歩みを見せていただけたように感じました。一方、心待ちにしていた方は、「こうして話を聴いてもらえる機会がないんだよね」とこぼしていました。

 心の回復への歩みに個人差があり、その歩調を尊重しなければいけないことを意識させられます。

 
流された家の柱
個別訪問を行ったスタッフは、ある家庭を訪問すると、隣人関係で苦しんでいる方を訪問し、その話をしっかりと聴いてきました。隣人の態度が嫌で関わり合いたくないのに仮設住宅のとなりだけに、簡単に関係も切れない中で苦しんでいる思いをしっかりと受け止めてきたようです。そんなに苦しんだったら、離れたらいいのに・・・と考えてしまいがちですが、そうもいかない地域との繋がりを意識するのがこの地域の特徴のひとつのようです。地域の慣習から、「自由になれない」苦しさ・・・がここにも有る様です。

 別のスタッフが出かけたのは、震災で父親を流されこの度高校を卒業した子に会うためでした。学校の成績もよく部活動も積極的で、祖父母の面倒をよく見る本当に立派な子です。残念ながら留守で出会う事はできませんでしたが、祖父母に出会いました。父親の死の後も、自分たち祖父母の面倒をしっかりと見てくれる孫を宝物のように思っている話を聴かせていただき、更に立派な子だという印象を受けて帰ってきました。
 でも、あまりにも立派に振舞う姿に、その子の悲しみ・苦しみが押し込められていないか心配にもなりました、「自由に自分の思いを自分で味わい」ふに落とせているのかなと。不自由でなければいいなと、本当に切に願いたいと思いました。

 「自由であること」・・・この大切さを考えさせられる一日でした。(記:宇根)




2013年7月30日火曜日

怒りが続く日々~怒りは次第に諦めになることへの不安~

昨日、ある仮設住宅に暮らす女性が、復興公営住宅への入居をするかしないかの最終決断を求める書面が届いたので 困ったと話していました。

 まず、送られてきた書面を読み理解することさえ難しい。加えて、住宅への入居への条件や家賃代の計算の仕方が難しく理解できない。今、入居するかしないかの決断をしないといけないが、入居できる住宅が出来上がるまでには4、5年かかり入居時に自分はどうなっているかわかないにも関わらず、今決断をしないといけない事への不満・・・、上げればキリがないほどのようです。

 仮設住宅での暮らしの大変さから、早く解放されたい気持ちは強いものの、公営住宅を選ばざるをえない人にとっては、決断は今でも入居時はどうなっているかわからない状態を考えると、とても複雑な思いになるのかもしれません・・・。その気持ちを抱えて暮らすこころは??

 今日、仮設住宅を訪問した際に、復興の歩が遅く、何をしているか!!という怒りを向けてくる方に出会いましたが、数年先の将来に不安のある方々には、今の被災地の復興への道のりのスピード感の無さに怒りがこみ上げてくるのもわかるような気がします。
訪問先で・・。
怒りを吐き出せるだけでも良しと思いたいのですが、次から次に出てくる怒りが解消されないままに続くと、次に生じるのは「諦め」「投げやり」になっていくのが心配です。


今日の活動は、午前・午後とも仮設住宅への個別訪問でした。訪問先は、4つの仮設住宅と二つの在宅住宅でした。スタッフ4人で、出会えた方は合計15人でした。人数で表せない一人一人の歴史や思いが詰まった出会いでした。

 また、今日は、午前中にとめ市民プラザを訪問し他の市民活動やボランティアグループの情報もいただいてきました。HUGハウスだけではなく、既に活動を行ってる他の団体と協同して行くことはとても重要と考えますし地元スタッフの成長にも大きな助けになると思います。
 突然の訪問でしたが、快く対応して下さったとめ市民プラザのスタッフのみなさん、ありがとうございました。(記:宇根)
 



2013年7月29日月曜日

太陽上り、人また集まる


しばらく雨が続き、北上川の水位は川辺いっぱいに満ちていました。今日は太陽が昇り、横山方面は特に熱さを感じました。訪れた仮設では、高齢者の方々が、太陽の熱さをしのいで、仮設が並ぶ通路に座っていらっしゃいました。早速声を掛けてみたところ、近所の方も顔を出され、しばらくその方と話をさせていただきました。

猫も集まる
(志津川方面仮設にて)

出会った方の中には、HUGハウスのような活動をしているスタッフに、気にかけている他の仮設の方を尋ねてほしいと言われます。今日の出会いの方にもそのように言われました。しかし良くお話を伺うと、できる限りの配慮や心遣いをその方が既にされていらっしゃることが分かります。できる範囲において、互いをサポートするという姿勢は、誰にも評価されないかもしれませんが、聴かせていただいたスタッフはとても感心し、それを伝えます。お互いのサポートの小さな工夫の積み重ねは、目に見えない「信頼」や生きる「希望」につながり、人の輪として大きくなるでしょう。スタッフは応援したいという気持ちで、聴かせていただきました。



他のスタッフは、いつも尋ねている方に声を掛けてみました。ほとんどの時間を仮設の中で過ごされているこの方は、部屋の外に出て、


横山方面の仮設。
こちらも、他の仮設住人の「尋ね人」を
訪問してみました。

午後から訪れた、志津川方面の仮設。
私たちの訪問前に、総理大臣の訪問が
あったと、にわかに住民の方々が
興奮されていた…。
スタッフと話をするのは良い気分転換になると嬉しそうな表情で話されていました。仮設在住の方だけでなく、仮設を尋ねる様々な方も混じり、人の集う場になりました。太陽は、仮設のドアを開け、人の心を解放し、人との交わりの場を提供していました。いただいた場で、心と心が触れる、良い出会いができるよう願いながら、今日も訪問をさせていただきました。(記:林)



JPFのスタッフと打ち合わせ
  今日は、7月から10月までの事業への助成金を提供してくださっているJPF(ジャパンプラットフォーム)から、スタッフが訪問してくださいました。
 提供してくださった助成金の会計についての相談と確認のためです。日頃、会計を担当していているじゅんこさんも加わり、適正な会計のありかたについて丁寧に教えていただけました。10月までの期間、被災地での心のケアや地元人材の養成に尽力していくことを改めて決意した時間でした。わざわざ訪問してくださり丁寧に教えてくださったJPFのスタッフの皆さん、本当に有難うございました。

 お知らせです・・・三滝堂HUGハウスにキャンピングカーが来ました。小さなキャンピングカーですが、庭の一角に素敵な雰囲気を提供してくれています。車内で庭を見ながらゆっくりした時間過ごすののにもいいです。お茶を飲んだりゆっくり話をするスペースにもいいです。どうぞ、ご利用ください。(記;宇根)

 






2013年7月26日金曜日

分かってもらいたい



 
 個別訪問がだんだん定着しています。
今日は特に、訪問先の方々からHUGハウスの訪問を楽しみにされているという声を聞かせていただきました。
ある方は、老人ホームに被災者として入居されている方です。訪問したスタッフに、文字で「今日の訪問を楽しみにしていた。」と書かれました。認知症を患っていらっしゃるこの方は、時々季節の感覚が混乱することがあります。しかし、人の温かみや、待ち人、大切にする人が今何をしているかなど、記憶は鮮明です。訪問に対して「ありがとう」を何度も繰り返され、スタッフもぐっとくる一面がありました。
見なし仮設集会場でのケアカフェでは、久しぶりに参加された方が、行政の対応に対する不満を訴えられました。カフェでは、その方の話を丁寧に聴きます。最後にこの方は、「このように分かってもらえるのは、とても良い。」と満足して帰られたようです。手続きや、これからの生活について尋ねるために役場に出かける時は、不安な気持ちと共に、勇気を振り絞って行かれるそうです。この気持ちを分かってほしい!訴える内容をきちんと聞いてほしい!邪険に扱わないでほしい! そのように聞こえました。
大切にされたいとは、万人のニーズでしょう。怒りの内容に特に共感できるスタッフは、「少なくとも、ケアカフェの時間に声に出して訴えることができたのは良かったのでは。」と話していました。
昨日から来られている荒さんは、午後に戸倉方面に出かけ、以前出会った仮設住宅在住の小学生に再び会うことができました。しばらく遊びながら、子どもの成長と気持ちの変化を確認することができたようです。
 
午後からは、スタッフ全員での研修会です。一般社団法人になったHUGハウスの定款を皆で確認、共有しました。HUGハウスの目的、それは「キリスト教隣人愛に基づく心と魂のケア、霊的ケア」や「心理カウンセリング」で地域社会の福利に貢献するというものです。このような概念やサポートの仕方は、この町にとって目新しい事なのかもしれません。しかし、地元スタッフには、活動や研修を通してHUGハウスの目的や目標、内容が浸透してきています。今日の研修の中で、それぞれが「HUGハウスって何してるの?」に答えてみました。それぞれ違う言葉を使いながら、HUGハウス活動の内容や目的を言い表すことができました。
町ごと被災という中で、特に「病む人、痛む人、悲しむ人」に寄り添い、お一人おひとりの心が元気になるようサポートしたい、また死の瞬間までその人らしく生きるお手伝いをしたい、そう願って活動を進めていきたいと思います。(記:林)




2013年7月25日木曜日

人が一緒に生きるとは~「わらいの館」訪問~

理事の白石さん
今日は、登米市内にある「わらいの館 四季 」というデイサービスを行っている施設を訪問してきました。以前に、とめ市民プラザで行われた『NPO交流会』で知り合えたのが縁です。一度、施設訪問とお話を伺いたいと思っていたところ、今日の訪問を快諾してくださり実現しました。

 「わらいの館 四季」はデーサービスと言っても通常のデイサービスではなく、「富山型デイサービス」を行っているところです。高齢者や認知症の高齢者だけではなく子供たちから障がいを持った方までを受け入れ、同じ場所で一緒に時間を過ごしていくという形をとっています。理事長の白石さんは、「成長をしていく子供達と年を重ね老いていく老人たちと共にいるところに寄り添っていくこと」「認知症と言われる方と障がいを持っている方が共にいるとろこに寄り添っていくこと」にとても大切な意味があると話しておられとても共感できました。施設を利用しているお年寄りや子供たちが、素敵な笑いを見せてくれたのは、本当に嬉しくなりました。
わらいの館四季

 人を子供だから、高齢者だから、障がい者だからと分けてしまうのではなく、同じ場所で生きていけないか。共に生きていく事で、人して生きることの尊さや老いることの意味、命を生きることの意味を共に考えていけるのではないか・・・「わらいの館」が発信するこのメッセージは、これから被災地で町づくりをしていく上で大きな示唆を与えてくれるのではないだろうかと考えさせられました。今後も、HUGハウスとの連携を希望してくださいましたので、是非一緒に考えつつ歩みを共にしていきたいと思いました。
 理事長の白石さん、忙しい中、時間を割き話をし見学を許してくださり、有難うございました。


 今日は午後から、宇多津地区の仮設住宅訪問と、荒砥拠点の整備を行いました。

 これまで何度もボランティアに来ている、あらさんが今日から手伝いに来てくれています。一緒に、荒砥拠点の荷物の片付けを行いました。これまで一部屋しか使えていませんでしたが、今日の片付けで二部屋が使えるほどになりました。あらさん、ご苦労様でした。

 訪問には、あきえさんが出かけていきました。大事なお孫さんと一緒に写っている写真を大切な宝物にしている女性との出会いがありました。震災前にご主人を失くし震災で何もかもなくし、まったく何もかも無くなってしまったその方は、いろいろな人との繋がりが支えだったと教えてくださいました。孫と一緒に映った写真がいろいろなところで公開され、多くの人達と知り合いになった事を紹介してくれる姿に、思わず写真を撮らせてもらいました。

 出来た繋がりの中に、出会いの不思議さが秘められているのでしょう。この不思議さを忘れないようにしたいものです。


今日は、ある地域で再建している家の「たてまえ」が行われていました。棟上げ式になります。大勢の地域の方々が集まり、工事の無事と成功を願う儀式。ここにも一つの復興があるんだなと感じます。振舞われるお祝いのお餅ちを通して、幸せが広がりますように願いたいものです。(記:宇根)





2013年7月24日水曜日

最初で最後のケアカフェ参加



昨日から明日まで、スタッフのケアに来て下さっているOさんが、今日も朝から施術をしてくださいました。
Oさんからの差し入れを頬張るスタッフ。
Oさんのお心遣いに感謝です!

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
仮設を生活と仕事場にされているお宅。
迎え入れたい孫の、遊ぶスペースが
確保できないのがつらいです。
ご夫婦でHUGハウス訪問を
受けてくださいました。
今日は、佐沼方面と入谷方面に個別訪問に出かけました。佐沼方面に出かけたスタッフは、ご家族を津波で二人失くされた方を訪問させていただきました。ご夫婦は、この現実を受け止めきれず、恐山に出かけられたそうです。スタッフとの対話の中で、しばし宗教的な話題が繰り広げられます。巡礼を終えたお二人は、失くされたご家族に対して一つの区切りをつけることができたとおっしゃられました。前に進まれるお二人にスタッフは、心でエールを送りました。人間を越えた何か、信仰や宗教的なお話を躊躇なく聞かせていただけるのは、心のケアならでは…ではないでしょうか。


 
カフェ案内掲示中…

 入谷方面に出かけたスタッフは、カフェ案内を届けながら、仮設を回らせていただきました。その中で、悲しいお知らせがありました。仮設で一人暮らしをされていたSさんが、2週間くらい前に亡くなられたということです。この方とは、個別訪問でしばらくのお付合いがありました。5月には、初めてケアカフェに参加してくださり、良いひと時を共にさせていただきました。ところがその後で、入院された事が分かり、そのまま帰らぬ人をなってしまったようです。仮設の方々も十分にお別れができず、不在のままのSさん…という感覚のようです。HUGハウススタッフとしても、まさかあの時のカフェ参加が、最初で最後となるなんて…と、驚かされました。明るく楽しく語って下さったSさんの姿が、今もっと輝いて記憶に残り




震災後からずっと体調がすぐれない方。
でも、休むと余計に病気になる…
とふらふらしながらも料理をし、
スタッフをもてなして下さるAさん。
出されたお料理の輝きは逸品です。

ます。そしてまた改めて教えられました。一回一回の出会いはかけがえのない貴重な時なのだと。

Sさんのご冥福と、残されたご遺族や周りの方々への慰めをお祈りいたします。(記:林)

2013年7月23日火曜日

問題に向き合いつつも懸命に生きるために

「ガレキ」が無くなった志津川の町の元畑だった場所にブルトーザーが土なららしを行う音が響いています。
 津波で流された畑を、懸命に耕している姿を最近よく見かけるようになりました。少しづつ少しづつ畑が戻ってくるに従い、畑で働く人の姿も目立ってきました。

 今日、ある仮設住宅に暮らす方が「私は、なんの特技もない、手芸なんてもできないし。頭も良くないんだよ」と話していました。何が得意なのでしょうか?と聞いてみると、漬物をつけることと畑を耕し野菜を育てることだと言われます。その方は、毎日のように周囲の家が無くなった畑に出てきては、畑作業に精を出している姿がよく見かけられています。好きな畑に出ていて色々な人に声かけられるのも嬉しいとも話していました・・・・。

珍しい黒い向日葵
ですが、いろいろ話を聴いていくいくうちに、実は家の中のいろいろな事が大変で畑に出てきている事を教えてくれました。どうにもならない大きな問題に向き合うつらさに押しつぶされそうになる時に、畑に出てきているようでもあったのです。逃げ場所があることは大事なことかもしれない・・・、そう思いました。問題から逃げるのではなく、問題にまた向き合っていくために、一時的に離れて冷静になったり力を取り戻したりする時間や場所も必要なんだと、教えられます。
大きな問題に向き合いつつ津波の被害に苦しみながら懸命に生きる姿、その力の源が強められますように・・・と願います。


カフェの風景
集会室の前で・・・。

 今日の活動は午前中はカフェ。午後からは個別訪問とカフェ案内を行いました。

 午前中は、志津川地区内の仮設住宅で「ケアカフェ心香」を開きました。始まる前に、カフェの意味を説明しスタート。地元スタッフの人数が参加者と代わりない程だったために、丁寧に向き合うことができました。

 嫁姑の問題、何もかもできなくなってしまった苦しみ、とうとう志津川の町を離れることが決まり、町を出ていかなければ行けなくなった寂しさ・・・。賑やかに過ごす間に、こぼされる心の痛みを大切に大切に受け止める。聴いてもらえた、話してよかった・・・。そのような実感を持てる時間になったようです。
 また参加者の中から、地元スタッフに「あんたたちは、ちゃんと講習を受けているんだね。見たらわかる、それに笑顔がイイね」と嬉しい評価をいただきました。日頃の研修の成果を実感できる言葉に嬉しくもなりました、地元スタッフの成長の糧だと思います。

 カフェ終了後、家に帰るより一緒に居たいという方や、いつまでも手を振って送っておられる方の姿を忘れないようにしたいものです(記:宇根)





2013年7月22日月曜日

あの頃に比べたら…


肌寒く、雨がパラパラ…朝のミーティングで、スタッフそれぞれが週末の出来事や、今日の調子を確認し合います。あるスタッフは、「今日の天気の様」との事、別のスタッフが「それは、時々晴れて、時々小雨ということですか?」と聞いてみます。「そうかもしれませんね。」
自分の出来事や感情を意識的に確認する作業は、訪問先での傾聴に集中するための準備です。
 

高齢者施設の中のデイサービスで、
仮設訪問の際
出会った方に再会しました。
あるスタッフが訪問したお宅で、
じゃがいもが丁寧に並べられて
干してありました。
 
午前中は高齢者施設を、午後からはそれぞれ個別に訪問させていただきました。

老人施設では、スタッフ4人それぞれが別のセクションを訪ねました。あるスタッフは、繰り返し同じお話をされる認知症を患った方を訪ね、聴かせていただきました。生き字引のような方のお話も伺わせていただきました。中には、お部屋を紹介していただき、過去に興じておられた趣味の数々を見せて下さる方がありました。「これが俺のマンションだ。」その方が自分の人生に自信を感じる瞬間を分ち合わせていただいたようなひと時でした。またあるスタッフは、寝たきりの方とも、言葉少なにゆっくりとした対話の時を持たせていただきました。印象的だったのは、久しぶりに訪問させていただいたスタッフが、一か月の間に随分入居者の方々の体調に変化があった事でした。ある方は、「あの人もこの人もいねぇよ。みんなこうやって体崩してくんだよね。」と話してくださいました。それから話が震災の事になり、「戦争を経験しているから震災は何でもない。」と語られました。実はこのスタッフ、午後からの個別訪問先でも、同じような事を伺いました。チリ地震に遭い、追い打ちをかけるように家族が交通事故に遭遇。夫も体調不良でこの方が家計の支えとして働きに出なければならず、心身ともに砕かれながらも生活を支えて来られたご経験を聞かせていただきました。
先日の「cocoタイム」での記念写真を
手渡しに、おしょうさんが仮設を回りした。
突然襲う自然災害による被害は、受け入れ難いことでしょうが、その解釈や、人との関係などで、生き方や物事に対する見方が随分変わるということを学びました。互いの配慮によって協力すれば、苦しみの経験が、軽くもなる―
きっと東日本大震災の被災後に受けられた支援が、この方にとって随分良かった体験だったのかもしれません(記:林)



 

2013年7月19日金曜日

日常から離れて自分を取り戻す~cocoタイム~

三滝堂に到着
 今日は、昨日までの雨も上がり、時折晴れ間も出てくる良い天気でした。

 先月から、三滝堂HUGハウスで「coco(ココ)タイム」という企画を実施しています。これは、山あいにあるHUGハウスの場所を仮設住宅や被災地で暮らす方々に開放し利用してもらい、自然との触れ合いを通して気分転換やリフレッシュを味わえる機会に役立ててもらいたいという思いで始めたものです。


皆でテーブルを囲んで
今日は、志津川地区にある仮設住宅に暮らす方々、10人をお招きしました。

 皆さん、出発前からとても嬉しそうでした。カフェでは見かけられない顔もありました。カフェでは着てこないような服装で嬉しそうに待っている姿に、こちらまでが嬉しくなりました。

地元スタッフとも一緒に
日頃、仮設住宅からはなかなか出かけられないために、三滝堂までの道のりは懐かしい場所や思い出ある場所、友人が住んでいる場所等などを確認したり隣同士で教え合ったりするなど車中は賑やかで懐かさもあふれる時間。

 三滝堂到着後は、皆でお茶や漬物を囲んでの団欒。
三滝堂公園へ散歩
三滝堂のお向かいのAさんも訪問してくれて一緒に、山の話し海の話に花が咲きました。仮設から持参したわかめの漬物と、三滝堂の地で採れたじゃがいもを互いに美味しくいただきながら、「海もいいけど、山もいいもんだな」「どこに居てもその地のモノでイカされるのさ」と参加された方の感想には、全くそうだと思いました。

参加者で記念撮影
しばらく団欒をした後は、希望者で近くの三滝堂公園まで散歩に出かけました。畑の間を歩きながら、知っている野菜や草花を見つけて嬉しそうに教えてくれる姿は輝いています。
 「今度は、食事もしながらしよう」という感想も出て、次回を待てる楽しみにもなったようで嬉しくなりました。

 仮設住宅の中での暮らしに生じてくる様々な課題から、ほんのひと時離れて自分を開放し、自然の空気や風に触れて生かされている実感を味わうことでいやされ、また課題に向き合っていけるようになれる事を期待したいと思いました。
梅の実の


 午後は、スタッフと三滝堂の整備。途中、敷地内になっている梅の収穫も行いました。これが梅酒と変わるのが楽しみです。
(記:宇根)



2013年7月18日木曜日

人との触れ合いを求めて・・・それを支える

昨日に引き続き、今日も土砂降り の雨、雨、雨。
集会室に移動するのも大変と思いつつ、志津川地区の中心にある仮設でケアカフェ心香を開催しました。カフェの声掛けに回ったとき、「どうしようかな。」迷いながらも、「行けば誰かに会える、人と話せる、声が聞こえる。」そんな思いで参加される方もおられました。一人、また一人と集まり、6人の方が参加されました。
同じ仮設にいても、会うこともなく、話すこともなく過ぎる日々のようです。何かきっかけがあればこうして集まり、人とのつながりや触れ合いを求めて集ってくる。

内容は、日常の暮らしぶりであったり、震災の体験を振り返り、苦労話や、回想、エピソードであったり、身近な方の近況であったり、さまざまです。ほとんどの方は、チリ津波の体験もされており、あの時は、今回はと、比較しながら語られる方も多かったです。直接内面に触れることはなかったですが、コミュニティづくりの機会になったことは嬉しいです。

同じ話でも、繰り返し繰り返し話しながら、その中でも「良かった」と思えることを見いだせるのも、人との関わりの力なのだと感じます。集いの終わりは、亡くなった方々の事を心に留め沈黙の祈りを捧げました。
左の写真は防災センター、大雨で冠水し近くに行けません。



下と右の写真はHUGハウス三滝堂の家の前の川です。増水し川原も全く見えなくなり濁流が勢いよく流れています。(記:堤)




2013年7月17日水曜日

互いに聴き合う関係が生まれる

 南三陸町の志津川地区は、昨日まで降り続いていた雨によって道路の至るところで冠水しています。震災によって生じた地盤沈下が原因です。

 ある地元スタッフは、自宅から役場があるところまで行くために利用していた道路のルートの4つの内2つが冠水していたそうです。スタッフは、冠水し通れなくなった道を見ながら、「自分が暮らさなければいけない町はこうなんだ・・覚悟しないといけない」と考えさせられたと分かち合ってくださいました。思い出のある風景や日頃使い慣れた道路も変わり、一変した町・・・、それでも私はここでくらさなければ行けないけないのだろうか。このような現実の思いを機会ある度に頭をよぎっていく日々。
  どのように生きていくか、どこで生きていくか・・・覚悟をきめていくという行為を迫られる被災地では、多くの人が何かの希望を抱きつつ、決断しようとしているのかもしれません。どうか、その決断、覚悟に支えと勇気がありますようにと願います。

 
 今日の個別訪問は、志津川地区の仮設住宅でした。
訪問先で、庭入れをしていて熱中症になり気分を悪くした方の話がありましたが、猛暑の影響はここにも現れてきていると実感します。
 ある女性を訪問した地元スタッフは、その方の若い頃、そして今の苦労話を沢山教えていただきました。我慢の連続だったにも関わらず、我慢・忍耐の姿を子供たちに伝えていきたいと望んでおられる姿は、まさに人生の教師のように感じるほど。
 その方が「私は、あんたに喋って心を楽にさせてもらうけど、あんたも私に話して、心をらくにしたらいいよ。どうぞ、私に話をしにおいで」と勧めてくれました。話を聴きに行き、話を聴いてくれる人に出会えたのでしょう。共に聴きあいつつ成長していける関係が生まれることは、嬉しいものです。


 午前中は、戸倉地区の仮設住宅でカフェを行いました。

参加者は5人でしたが、スタッフ一人一人がしっくりと話を聴ける時間が持てました。

 参加者のお一人が、「美味しいものを食べると75日、長生きするんだよ」と話されていましたが、じっくり話し語りが出来たら何日分かイキイキする力が生まれるだろうな・・・と思いました。終了後のHUGや握手の時間に見せた参加者の嬉しそうな笑顔をみながら思いました。(記:宇根)